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2010年2月

2010年2月22日 (月)

藍植物で染める紫色 インジルビンとは?

 久々に染色材料店に行ってみると、紫色に染めたシルクストールの染色見本が目にとまりました。

 インド藍の干し葉で染めるとあります。袋詰めになった乾いた葉は、ほんのりと紫色で魅力的でした。新商品だろうか?たぶん今まで店頭で見たことは無かったと思う。

 天然染料で紫に染められるものは限られているし、高価で稀少なものが多い。
 インド藍でむらさきが染められるとは どこかで聞いたことは有るような気がするけれど、どうしたらよいのかわからなかった。 おもわず購入し、 はじめてなのでマニュアルをつけていただきました。
 
 マニュアルには、インド藍に含まれているインジルビンという色素で染めるとあります。

 インジルビンをグーグルで検索してみると

日本の蓼藍の生葉から、紫を染める方法について 解りやすく解説している
武庫川女子大学牛田智研究室のサイトを見つけました。.通常の建て染めや生葉染めについても解説しています

 自分で理解出来るように要点をまとめます。

藍植物の中にはインジゴの前駆体であるインジカン(無色)が含まれている。葉の組織が破壊されるとなかに含まれている酵素により分解して、インドキシル(無色)になる。インドキシルの2分子が酸化的に結合するとインジゴ(青)になる。

インジルビン(赤)は、インジゴの異性体で、分子式は全く同じだが原子のつながり方が異なる分子のことである。
 インドキシルが単分子的に酸化されてイサチンが出来ると、未酸化のインドキシルと結合してインジルビンができる。
 
紫色は、このインジゴインジルビンが混ざった色で単一の紫の色素ではない。赤味の紫になるか青味の紫になるかは、インドキシルから、二方向の酸化のどちらが起こりやすいかによって決まる。

インドキシルからインジルビンを多く生成させる条件は、ph10~12のアルカリ性条件や,高温が好ましい。

牛田智  「生葉染色の化学的な観察とその実際方法 藍の生葉染めによる絹の紫染め」 染色@No225,p64~67(1999)
牛田智 谷上由香 「藍の生葉染めにおける絹の赤紫染色の条件」 日本家政学会誌 49巻9号P1033~P1036(1998)

 蓼藍ならば我家にもある。
 自然に生えている状態では、染料の色素になるインジゴがまだ生成されていないので、藍の葉は葉緑素の緑色をしている。枯れると茶色ではなく、くすんだ紺色っぽい色になるのは、葉に含まれていた無色のインジカンが分解して酸化され、インジゴになっているからだと理解できた。

 しかし蓼藍の乾燥葉では、すでにインジカンがインジゴの色素になってしまっているので、インジルビンは生成されないということになる。蓼藍で紫を染めるには生の葉が必要なので,夏しか染められない。
 蓼藍から紫を染めるには、生葉のほか、冷凍した葉でそめる方法について説明しているサイトも有りました。夏になったら試してみたいと思います。

 ところでインド藍の葉は枯れるとインジルビンを多く含むものがあるそうです。染色材料店で購入したインド藍の干し葉は,紫色に枯れています。

 インド藍の干し葉の染色結果は次回のブログで

 

 

2010年2月21日 (日)

インド藍の干し葉で染めた紫色

  染色材料店でいただいたマニュアルを参考にして染めてみましたが、染料はだいぶ少なめにしてみました。濃い紫ではなく藤色に染めたかったので。

インド藍干し葉の還元染め 手順

材料 絹ジョーゼットストール13g  ラオス手織り絹ストール19g (計32g)
    干し葉藍(インド藍)30g ソーダ灰5g×2 ハイドロサルファイトコンク5g×2 
    水840cc×2

抽出法

  1. 80℃の温湯に干し葉藍を入れ、5分程漬けて汚れをとる。茶色くなったこし液は捨てる。
  2. 60℃の温湯840ccに、ソーダ灰5g ハイドロサルファイト5gを加え,干し葉藍を入れて、10分間加温しながら煮る。 火を切り,10分間放置
  3. この還元液を別容器に移す。
  4. もう一度2から3の作業を繰り返し、一度目の抽出還元液に2度目の抽出還元液を足す。

染色

  1. 抽出還元液を40~50℃に保ちながら布を静かに入れ、布が液面から出ない様に注意して染める。
    ph10.4
  2. 5分くらいしたら布を取り出して絞り、ひろげて空気にさらす。
  3. 水洗いしてから酢水につけて中和 再び水洗いして脱水 乾燥

染色結果

  • Photo 左端から シルクジョーゼット  最初に還元液に浸し、5分間染色して引き上げた.。

    ラオス手織りストール シルクジョウゼットを引き上げた直後に、5分染色、最初より若干青味が強い紫に染まった。

    左から3番目4番目 2枚染め終わってからまだ染まりそうな感じがしたので再び新しい白生地ストールを入れてみた。.3番目は淡いグレーに近い紫で一段と青味が増した。赤い色素はほとんど吸着したのだろうと思った.が、その後試したもう1枚は、なぜかピンクがかった淡いグレーになった。

    左から五番目 マニュアルでは染料の抽出は2回ですが、まだどのぐらい色素が残っているか確かめたかったので、もう一度干し葉の抽出還元をしてみました。3番目の抽出液だけで染めたストールが右端です。けっこう染まりましたが,1+2番液より彩度は低い。

感想

 乾燥すると紫色に枯れるインド藍の干し葉の色素はインジゴインジルビンが混ざった色。単一の紫の色素ではないので青味の紫になるか、赤味の紫になるかは,染色の条件によって異なる。今のところ意図的に調節するのは難しそうだ。

 赤と青を混ぜて作った紫は単一の色素の紫より再度が低く、くすんだ色になるが、インド藍の干し葉から染める紫は彩度が高くてきれいだ。二つの色素がもともと同じ物質インジカンから成ることと関係あるのだろうか?

 藍植物から染まる紫色は魅力的だが、通常の藍の建て染めと比べるとかなり効率が悪く、大きなものや厚地を染めるのは大変そうだ。

    

2010年2月 5日 (金)

雪花絞りの実験1追記

Sekka_yoko 2重映しの雪花絞り

「雪花絞りの実験1」でこの画像を入れるのを忘れてしまいましたが、これはなぜか雪花の模様が2重映しになりました。めずらしい現象なので、ぜひ記録しておきたいと思います。

 2回続けて出来ましたが、その後は普通に戻り二度と同じようにはなりませんでした。原因不明ですが、この時は染料の浸透がいつもより速かったような気がします。

 染液のアルカリ濃度やハイドロの効力は、時間の経過とともに徐々に変化してしまい一定に保つのはむずかしい。その為,酸化してきたなと思ったら、苛性ソーダ液やハイドロを少しづつ追加しているのですが勘に頼っているのであまり正確ではない。

 二重映しになったときは、最も染液の状態が浸透しやすい条件を備えていたのではないだろうか?

「雪花絞りの実験1」まとめ

(発色むらの原因)
 
 浸染で出来なかったまだらの発色むらが雪花絞りで出来てしまうのは,染料を吸い上げさせた後の酸化発色の過程に問題があったからだ。

 水洗いと空気酸化を交互に繰り返しながら徐々に酸化させ、1時間以上たってから板をはずし、水中で布を広げ完全に発色させる。1時間と書いたが,もっと長い時間のほうが良いかもしれない。次回の実験で追及してみよう。

 単色で1度で染める雪花絞りの美しさは、幅広い濃淡の階調に有ると思う。

(美しい藍の濃淡の階調を作るための条件)

  1. 染液の状態(アルカリ濃度 ハイドロの効力 染料の濃度)
  2. 畳んだ布を板で締める時の力加減
  3. 染液につける時の深さやタイミング
  4. 染めた後の酸化発色の過程 

4つの条件については次回の実験でもっと具体的に検証してみたい。

2010年2月 2日 (火)

雪花絞りの実験 1

これは失敗なのですが,偶然雪の結晶のように染まりました。

Photo_3  雪花絞りはいく重にも折りたたんだ生地に染料を吸い上げさせるので、畳んだままではなかなか中まで酸化しません。試しに一晩畳んだまま放置してみました。
 
翌日開いて見ると、さすがになかまで酸化して青くなっていました。しかし、なかなか酸化しなかった染料がすこし流れてにじんだりしたのだろうか?まだらになって白く抜けてしまったところが雪の結晶のようにも見えます。折り山の内側の部分も白く抜けていました。
 
 あまり早く開いてしまうと,染料が流れて薄くなってしまうし、,時間が長すぎても良くないようです。
 

Photo_2

  こちらは発色むらが出来てしまいました。この発色むらの原因がいままでわからなかったのですが、やっとわかりました。

 折りたたんで板で締め、染料を吸い上げさせてから、絞るべきか絞らないべきか?てぬぐいサイズのときは無意識に絞ってしまっていましたが、この段階では決して絞ってはいけなかったのです。絞ったほうが早く酸化はするのですが、模様がにじんでしまいます。

 その上、板と生地の間にすきまが出来,糸がゆるんでしまいます。そこに空気が入ると、布にたっぷり含まれた染料が酸化して被膜を作ってしまい,染着することなく固まってしまいます。これがまだらの発色むらの原因でした。

  

Photo_5

 三角形の頂点だけを染料につける雪花絞りです。

 こちらの方が要素が単純で失敗が少ない。わりと藍の濃淡がきれいに出たと思います。やはり染めるときのタイミングだけでなく、洗い方,酸化させる過程も重要な要素でした。
 染料につけた三角形の頂点の部分がつねに下になるように注意しながら洗います。

 外側から見える折り山の部分が完全に酸化して青くなったら、染料につけた頂点の部分が下になるように固定し、一時間ぐらい染料が自然に落ちるのを待ち,酢水で中和します.。

 もう一度たたんだまま水洗いして板をはずし、たっぷり流れる水の中で,白場を汚さないように注意しながら、布を開いていきます。中のほうは開いた時、まだ完全に酸化していませんが、水中で洗いながら酸化させます。
 桜の花びらのような形がわりときれいに出たので、地色を茜と柿渋で染め重ねました。

Sakurasekka_yoko_2 
  こちらも三角形の頂点だけを染液につける雪花絞りです。上の茜地の雪花絞りより水をたくさん吸い上げさせてから,三角形の頂点を染液に入れました。だいたい同じような感じではありますが、花形の中心が少し広がった感じです。

 上の茜地の雪花絞りより折り山の線が白く抜けてしまっているのがちょっと気に入らないのですが、この原因は酢水の中に長時間放置してしまったからだと思われます。
 酢水の中なら早く酸化してくれるだろうと思ったのですが、やはり染料が水中に少し流れてしまって,部分的に藍の色が薄くなっているところも有りました。
 
つまり空気中でも水の中でも、長時間放置するのは良くない。空気酸化と水洗いは交互に繰り返した方が、きれいに発色するということが解りました。
 .と言うわけで、雪花絞りは,染めた後のほうが時間がかかるし、細心の注意が必要で気が抜けないのだ。

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フォト

せみのはねの雪花絞り

  • 20250407-1151
     染めるたびに少しづつ違ってしまって狙った通りに染めるのが難しい雪花絞り。 いつか理想の雪花絞りを染めることを夢見て、雪花絞りの染色の記録を撮り続けています。

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